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エピソード―わたしと神経発達症
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周囲の理解について
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困っていること
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大人の神経発達症(発達障害)とは
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自分の特性を知る―医療機関に相談する
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大人の神経発達症(発達障害)の身近な相談窓口
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大人の神経発達症(発達障害)
について
監修:小坂 浩隆先生(福井大学医学部精神医学 教授)
神経発達症(発達障害)は珍しいものではありません。
特性のあらわれ方や程度は、人それぞれ。
大人になってから明らかになることもあります。

神経発達症(発達障害)とは?
神経発達症(発達障害)は、生まれつきみられる脳の働き方の違いによって、物事のとらえ方や行動に違いがあらわれます。
神経発達症(発達障害)の特性のために、コミュニケーションや対人関係において苦手なことがあり、日常生活に困難が生じる方もいます。しかし、一見すると分かりにくいため、周囲が本人の困りごとに気づいたり、理解したりするのが難しいこともあります。
神経発達症(発達障害)には、ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、学習障害(発達性学習症)などの種類があります。また、ADHDとASDの両方の特性がみられるなど、複数の神経発達症(発達障害)を併せ持つこともあります。

https://hattatsu.go.jp/notice/notice202108-01/(2024年10月2日アクセス) American Psychiatric Association: DSM-5精神疾患の分類と診断の手引.医学書院.2019.p.26-29を参考に作成
ADHD
注意や集中が続かない、作業にミスが多いといった「不注意」や、落ち着きがない、じっとしていられない、待てないといった「多動性‐衝動性」がみられます。
ASD
社会性・コミュニケーションの難しさ、パターン化した行動や興味・関心の偏りなどを特徴とします。感覚の過敏や鈍麻がみられる場合もあります。
学習障害(発達性学習症)
知的な遅れはなくても、読み書きや計算などが難しく、得意な学習と不得意な学習にばらつきが大きくみられます。
神経発達症(発達障害)の原因
ADHDやASDなどには、さまざまな遺伝子や環境因子が関係するといわれていますが、原因は明らかになっていません。脳機能の発達のバランスが関与して、行動や態度にさまざまな特性があらわれるもので、本人のやる気や努力不足、保護者の育て方などだけが原因ではありません。
神経発達症(発達障害)の男女比
日本で2022年に厚生労働省が行った調査によると、発達障害と診断された人のうち、男性は68%、女性は32%でした。
出典:厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」
大人になってから明らかになる場合も
神経発達症(発達障害)では、子どものころから行動面や情緒面に特徴がみられます。しかし、子どものころは個性として、家族や周囲のフォローを受けながら、特に問題なく日常生活を送れており、神経発達症(発達障害)であることがわからないことも多くあります。
ところが、進学や就職で社会に出ると、コミュニケーションや人間関係が広く、複雑になります。周囲に合わせた行動や、仕事の計画的な進行、相手の意図を察することなど、さまざまなスキルが求められます。環境への対応が難しくなって、神経発達症(発達障害)の特性が明らかになる場合もあります。
神経発達症(発達障害)の方は、コミュニケーションや対人関係が苦手であることから、「人の気持ちが分からない」「自分勝手」などと誤解されてしまうことがあります。また、環境が影響して、苦手なことや不得意なことが生じやすくなりますが、特性を得意なこととして生かしている方もいます。自分の特性にあった工夫をしたり、サポートを得たりすることで、生活の中での困りごとが軽減されることもあります。
当事者の経験、困りごとや思いをもっと知る
「苦手・困りごと」と「得意・長所」をもっと知る
大人の神経発達症(発達障害)の治療や支援
困りごとでストレス状態が続いていると、精神的不調につながることがあります。困りごとを感じたら自分で抱え込まずに、市区町村の相談窓口や発達障害の相談支援にあたる専門の相談窓口、医療機関に相談することが大切です。
各地域には、生活や仕事など、神経発達症(発達障害)の相談を受ける総合窓口である「発達障害者支援センター」があります。本人だけでなく家族も相談できます。近年では、大人(19歳以上)の相談が多くなっています。
仕事についてはハローワークの発達障害の方向けの支援や、職業能力評価やワークトレーニングなどを行う「障害者職業センター」などの支援を利用できることもあります。
学校生活では、学生相談室・障害学生支援室などの支援窓口で相談できます。
医療機関では、検査・診断を行い、その結果や特性に応じた支援などを行います。必要に応じて薬物療法を用いることもあります。

治療や支援についてもっと知りたい
相談窓口をもっと知る
神経発達症(発達障害)の受診・診断についてもっと知る
ADHD・ASDの特性をチェックしてみる
大人の神経発達症(発達障害)への対応
神経発達症(発達障害)の特性や程度は一人ひとり異なり、必要な配慮も異なります。家族や職場をはじめ、周囲が専門家と一緒に得意なことや強み、苦手なことやサポートが必要なことなど特性を理解し、それぞれの特性に合うサポートの工夫を考えることが大切です。
自身の特性を知り、ちょっとした工夫をしたり、周囲に伝えて支援を受けたりすることで、少し気が楽になったり、生活が少しスムーズになったりするかもしれません。
仕事や生活の中でのちょっとしたコツやテクニックを知る

引用・参考文献
- ・国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所:こころの情報サイト 発達障害(神経発達症)
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MbkmLbVbTEhSpxyE(2024年10月2日アクセス) - ・政府広報オンライン:発達障害って、なんだろう?
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/index.html(2024年10月2日アクセス) - ・国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部 発達障害情報・支援センター:発達障害の理解のために
https://hattatsu.go.jp/notice/notice202108-01/ (2024年10月2日アクセス) - ・ADHDの診断・治療指針に関する研究会 編: 注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第5版. 第1-4章. 株式会社じほう, 2022,
- ・政府広報 大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202302/1.html(2024年10月2日アクセス) - ・厚生労働省 令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsu_chousa_c_r04.pdf(2024年10月21日アクセス) - ・小坂浩隆, 他. 最新精神医学. 2017;22(3):197-208.
- ・国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター:発達障害者支援センターにおける支援実績
https://www.rehab.go.jp/ddis/action/achive/(2024年10月18日アクセス)