木村さん、いつも、仕事の段取りが悪いなあ。
毎回、やることは全部確認しているのに。
周囲の理解について
困っていること
大人の神経発達症(発達障害)とは
大人の神経発達症(発達障害)の身近な相談窓口
監修:小坂 浩隆先生(福井大学医学部精神医学 教授)
木村さんは、メーカーの営業部に所属し、顧客に製品の紹介や提案をする仕事をしています。
製品について詳しい情報が必要な時は、技術部に確認しています。
登場人物
木村さん
入社して3年。
今年から営業部第2チームに配属された。ADHDとASDの診断あり
リーダー 工藤さん
営業経験7年。
営業部第2チームのリーダー
技術部の担当者
営業部に技術情報を提供する担当者
営業部第2チームのメンバー
営業部第2チームでは、顧客のA社を訪問して製品の導入提案をする予定で、提案の資料作成を木村さんが担当しています。
顧客訪問の2週間前には、提案資料をチームでチェックすることになっています。
訪問が近づいてきたので、リーダーの工藤さんは、木村さんに尋ねました。
リーダー 工藤さん
A社の提案資料と見積書、できている?
そろそろ事前チェックだよね。
木村さん
すみません、B社の資料を先に仕上げていて、A社のはまだできていません。
リーダー 工藤さん
B社の資料は、もう少し先でよかったよね。
A社の資料に入るデータは、技術部から入手してある?
木村さん
申し訳ありません。まだ依頼していません。すぐに依頼します。
工藤さんの見かた
木村さん、いつも、仕事の段取りが悪いなあ。
毎回、やることは全部確認しているのに。
木村さんの見かた
毎回、リーダーの工藤さんは指示をくれるけれど、いつどの業務からやるのか、分からないままやっている。
見通しを持って仕事できなくて、迷惑をかけているなあ。
リーダーの工藤さんは、一連の業務で必要なことはすべて指示しているのに、どこが理解できないのか疑問に思っています。
一方、木村さんは、業務の順番・優先順位など、一連の業務の見通しを持てないことに困っています。
リーダーの工藤さんと木村さんは、仕事の進め方を話し合いました。
木村さん
工藤さんの指示内容の一つ一つは理解していました。
ただ、業務の優先順位や、他の業務とどう並行するのかを、うまく整理できていないです。
それと、口頭で一度にたくさん指示を受けるのが、少し苦手なので、指示をお聞きする際に別の方法を検討させてほしいのです。
リーダー 工藤さん
必要なことは伝わっていたけれど、段取りをする段階で難しいところがあったのですね。
今後は、優先順位も含めて、口頭指示だけでなく、記録できる形で伝えるようにしますね。
木村さん
私は、業務の順番を組み立てるのが苦手なところがあります。進める流れに沿った指示だと理解しやすいです。
リーダー 工藤さん
なるほど、業務の流れの把握が苦手なのですね。
手順が混乱しないように、タスクごとに順番に伝えるようにしますね。
指示は、口頭でなく、記録できる形で、業務の手順に沿って伝えることを確認しました。
※すべての方が自分の苦手な・不得手な部分を自覚しているわけではないので、周囲の方が推測いただき確認していただくのが望ましいです。
リーダーの工藤さんは、一つの業務ごとに順番に指示するようにしてみました。
リーダー 工藤さん
技術部に、●●のデータを依頼してください。
木村さん
はい、依頼しました!
入手しました!
リーダー 工藤さん
◆◆のデータをエリア別に分けて表にしてください。
木村さん
承知しました。できました!
リーダー 工藤さん
技術部にチェックを依頼してください。
木村さん
はい、チェックいただきました!
順番に指示することで、うまく進んでいますが、木村さんが、リーダーの工藤さんの指示を待って業務をする体制になっています。
一つ一つ指示する進め方で本当によいのか?とリーダーの工藤さんは疑問に思い、率直に話し合いました。
リーダー 工藤さん
木村さんは、流れの把握が苦手ということでした。でも、私が手取り足取り指示しなくても、一連の業務を並行して一人で進められるのではないでしょうか。ご自身ではどうですか。
木村さん
はい、今やるべきことが明確だと業務をしやすいのですが、指示待ちだといけないと思っています。
並行する業務があっても、完成までの一連のタスクと流れの見通しがあれば、自分でも進められると思います。
リーダー 工藤さん
一連の業務の順番と全体像さえ明確であれば、一人で進められそうなんですね。
タスク表などを使うとよいでしょうか。
木村さん
わたしは、文字のみよりも、ビジュアルの情報だと理解しやすいです。
リーダー 工藤さん
なるほど、それではガントチャートを使うのはどうでしょうか。
複数の業務を並行して進めるときに使うことが多くて、私も使い慣れているものです。
木村さん
これは分かりやすいですね。使ってみたいです。
ありがとうございます。
木村さんとリーダーの工藤さんは、視覚的に並行する業務の順番や流れをとらえやすい、ガントチャートでタスク管理をすることにしました。
木村さんは、リーダーの工藤さんと週単位で進行を確認して、並行して一連の業務を進めるようになりました。
これをきっかけに、第2チームでは、もっと簡単にチームメンバーの業務進行が見える体制を検討しています。
木村さん
飛んでくる業務指示の一つ一つに混乱していましたが、業務の全体の進行が目に見えることで、見通しを持って仕事をしやすくなったと思います。
みなさんと協力しやすくなりました。
リーダー 工藤さん
木村さんが、一つ一つのことはちゃんとできるのに、なぜ完成までうまく進められないのか分かりませんでした。
全体像が目に見えれば、自分で進められることが多いことが分かり、できる仕事も大きく増えて、貢献してくれています。
チームで進行を把握して、業務分担や情報共有がしやすくなったと思います。
技術部担当者
これまで、営業部からたびたび突然急ぎの依頼があり、内容を十分に確認できなかったことがありましたが、余裕を持って依頼が来るようになり、お互いにスムーズになっていると思います。
営業部第2チームのメンバー
木村さんの使っているツールを活かして、チーム内で業務進行の把握を進めています。メンバー間で業務の重複などがあることが分かり、業務の効率化ができたことがよかったです。
課題となった特性
この職場でやってみたこと
※このストーリーは、ADHD・ASDの診断を受けている方への就労定着支援のケースを参考に構成しています。