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- エピソード―わたしと神経発達症
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周囲の理解について
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困っていること
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大人の神経発達症(発達障害)とは
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- 自分の特性を知る―医療機関に相談する
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大人の神経発達症(発達障害)の身近な相談窓口
相談窓口に聞いてきました
監修:小坂 浩隆先生(福井大学医学部精神医学 教授)
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、ハローワーク(公共職業安定所)との連携のもと、障害者への専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。
「〇〇(都道府県名)障害者職業センター」という名称で、全国47の各都道府県に1か所設置されています(ただし、北海道、東京、愛知、大阪、福岡は2か所設置)。
神経発達症(発達障害)の特性があるために、仕事で悩んでいる方にとって、どのような相談ができるところなのか、地域障害者職業センターの業務の企画や連絡調整などにあたっている障害者職業総合センターに伺いました。
障害者職業総合センター
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
職業リハビリテーション部指導課
(2023年6月取材)
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Q1神経発達症(発達障害)の利用者の割合は?
全国にある地域障害者職業センター(以下、センター)の利用者で、神経発達症(発達障害)の方の割合はどれくらいでしょうか。
A1
利用者全体の約3割が神経発達症(発達障害)の方です。精神障害の方に次いで多く利用されています1)。
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Q2どんな悩みを相談できる?
神経発達症(発達障害)の方は、センターでどのような悩みを相談できますか。
A2
就職に向けた、また、働き続ける上での不安や課題などを相談できます。
- 自分の力を発揮できる仕事や、体調に合った働き方をしたい
- 疲労やストレス対処法を身につけたい
- 力を発揮できる仕事内容や職場環境を知りたい
など仕事上の様々な悩みや希望に対応しています。
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Q3どんな人が利用できる?
神経発達症(発達障害)では、どのような方がセンターを利用できるのでしょうか。
A3
求職中の方の利用が多いですが、現在仕事をしている方のご相談も受けています。
障害者手帳や、神経発達症(発達障害)の診断の有無にかかわらず利用できます。また、神経発達症(発達障害)であることを職場に伝えた上で(事前開示)働きたい、伝えずに(非開示)働きたい、さらに、一般枠と障害者枠のどちらで就職するかを悩んでいる方など、希望に応じた利用、ご相談が可能です。
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Q4センターの利用に至る経緯は?
どのような経緯で、センターを利用される方が多いのですか。
A4
ハローワークから紹介された方が多いです。ハローワークに仕事の相談をされた方で、個々人の特性や職業上の課題を知るために「職業評価」(Q6を参照)を受ける目的での紹介が主です。
そのほか、ご自身が受診している医療機関や、障害者就業・生活支援センターに相談された方の紹介、インターネットで調べて直接申し込む場合などもあります。
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Q5どんな支援をしている?
センターではどのような支援を行っていますか。
A5
個々人の特性や仕事上の課題を見つけるために「職業相談・職業評価」を行い、一人ひとりに合わせた支援プランを作成します2)。
その上で、必要な方には「職業準備支援」や「ジョブコーチ支援」を行うこともあります。
「職業準備支援」は、特性や仕事上の課題に応じて、適切なコミュニケーションの取り方や、効率よく作業を進めるための工夫などを習得できるように支援します。また、就職した方が長く働き続けられるように、職場にジョブコーチが訪問して相談支援などを実施したり、職場に対しても必要な情報の提供・助言を行ったりします2)。
交通費・食費は自己負担ですが、センターの利用は無料です。
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Q6「職業評価」でわかることは?
「職業評価」で、どのようなことがわかりますか。
A6
実際の仕事の場面を模した作業を行うなど、様々な手法を用いて評価します。作業の中で、利用者がどのような強みや特性を持っているか、どのような点でつまずきやすいかなど、いろいろな角度から分析します。
その後、働く上で得意なこと・苦手なことなどを把握・整理し、ご自身の希望を踏まえて、どのような職場環境やサポートが必要かを含めて検討し支援プランを作成します。
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Q7支援を受けることでの変化は?
センターで支援を受けることで、どのような変化があるでしょうか。
A7
仕事自体のスキルは持っていても、コミュニケーションなどでつまずきがあり、孤軍奮闘しては失敗してしまうことを繰り返してきた方も多いことから、センターでの支援は、自身の職業上の課題だけでなく、強みや能力にも気づいてもらうきっかけの一つになると思います。
「一人で悩みを抱え込む必要がないことに気がつけた」「考える可能性の幅が広がった」という声もありました。また、「職場にオープンにするのは不安だったが、意外と理解や配慮を得られて働きやすくなった」という方もおられました。
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Q8現在の課題は?
現在取り組んでいることや、神経発達症(発達障害)の方を支援するなかでの課題はありますか。
A8
神経発達症(発達障害)の方が働き続けるためには、就業者本人への支援だけでなく、雇用主(職場)側への支援も大切です。私たちは、必要な配慮の助言など職場への支援にも取り組んでいます。大企業に比べて中小企業は障害者雇用が進まない傾向にありますが3)、作業の流れの整理、マニュアル化など、神経発達症(発達障害)の方に配慮したしくみを整えることは、結果として全ての従業員にとって働きやすい環境づくりにもつながると考えています。
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Q9仕事で悩みを抱えている方へのメッセージ
神経発達症(発達障害)の特性のために、仕事で悩みを抱えておられる方へメッセージをお願いします。
A9
仕事で何か困りごとがあったら、地域障害者職業センターでなくてもよいので、まずはお住まいの地域の支援機関に相談してください。ひとつの機関とつながれば、より的確な支援ができる機関を紹介してもらうこともできます。ご自分に合ったサポートを得て、職業生活を送るために、相談という第一歩を踏み出していただきたいと思います。
- 引用・参考文献
- 1)厚生労働省:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 令和3年度業務実績評価書
https://www.jeed.go.jp/jeed/disclosure/law/jeed/om5ru8000000512n-att/q2k4vk000004tdta.pdf (2023年6月27日アクセス) - 2)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構:地域障害者職業センターのご案内
- 3)厚生労働省:令和4年 障害者雇用状況の集計結果
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001027391.pdf (2023年6月27日アクセス)