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エピソード―わたしと神経発達症
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大人の神経発達症(発達障害)とは
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大人のASD
(自閉スペクトラム症)
監修:小坂 浩隆先生(福井大学医学部精神医学 教授)
他の人と話すのって難しい。
相手の気持ちがよくわからない。
大きな音が苦手。

ASDとは?
ASDは、社会性・コミュニケーションの難しさ、パターン化した行動や興味・関心の偏りなどを特徴とする神経発達症(発達障害)です 。
ASD:Autism Spectrum Disorder(自閉スペクトラム症)
言語(言葉)・非言語(視線、表情、身振りなど)でのやりとりや、自分の気持ちを伝える・相手の気持ちを読み取るといったコミュニケーションが苦手です。特定のことに強い関心を持ったり、こだわりが強かったりという面もみられます。感覚の過敏さ・鈍感さを持ち合わせる場合もあります。
ASDでみられる特性(例)
社会性・コミュニケーションの難しさ
・言葉を文字通りに受け取ってしまい(冗談や嫌味が通じず)、混乱してしまう
・相手の気持ちが読み取りにくい
・「はい」「いいえ」以外で答えなければならない質問への回答が苦手
興味・関心の偏り、こだわり
・目で見る情報の方が理解しやすいなど、感覚処理に偏りがある
・細部にとらわれて全体として捉えることが苦手
・予期しない変化にとても混乱してしまう
感覚の過敏さ・鈍感さ
・肌触りがいいものを触り続ける
・まぶしいところが嫌いで、薄暗い部屋にいるのが好き
・大きな音が苦手
これまで、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などと呼ばれていた障害が、現在は「ASD」とまとめて表現されています。
ASDの特性のあらわれ方や程度は、一人ひとり異なります。ADHDなど、ほかの神経発達症(発達障害)の特性をあわせ持つことも少なくありません。また、ASDの特性によって生じる困難さから、精神的な不調を伴う二次障害を発症する場合もあります。
ASDの特性をセルフチェックしてみる
ASDの原因、発生頻度など
ASDの原因は、まだ明らかではありませんが、遺伝子や環境因子などが複雑に関わって、生まれつき脳の働きに違いがみられると考えられています。保護者の育て方が原因で起きるものではありません。
人口の約1%が該当し、男性が女性の4倍多いと報告されています。しかし、ASDの特性を持つ人は、実際はもっと多いのではないかと推測されます。
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」
大人のASD
学校生活で、適応のための対人スキルがより複雑になり、つらさを感じたり、問題があってもうまく相談できなかったりすることがあります。無理に周囲に合わせようと、本来の自分を隠して他の人と同じようにふるまおうとする「カムフラージュ(カモフラージュ)」をしていることも多いといわれています。
大人になって、対人関係や仕事で臨機応変にこなせなかったり、子育てや家庭生活などに悩みを抱えたりしてしまう場合もあります。
社会生活の中では、「言動で相手を怒らせてしまう」「あいまいな指示への対応が難しい」「面接が苦手」「複数の業務を並行して行うことや、臨機応変な対応が難しい」などの困りごとを抱えやすいといった特徴がみられます。


一方で、ASDの特性によって、裏表がなく、ルールを守るまじめさや細やかさ、特定の知識の豊富さなど、強みが発揮されることもあります。
ASD当事者の経験、困りごとや思いをもっと知る
「苦手・困りごと」と「得意・長所」をもっと知る
大人のASDの治療や支援
医療機関では、検査・診断や特性に応じた治療、支援などを行います。
現在のところ、ASDの中核症状への根本的な薬物療法はありませんが、ASDの特性から生じる精神的不調に対する薬物療法を行うことがあります。精神療法、心理社会的療法、リハビリテーション療法なども治療法の一つです。

治療や支援についてもっと知りたい
ASDなど神経発達症(発達障害)の受診・診断についてもっと知る
大人のASDなど神経発達症(発達障害)の治療や支援を知る
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大人のASDへの対応
大人のASDでは、決められた仕事はしっかりこなせていても、急な対応や仕事内容の変更には混乱することがあります。自分なりのルールや行動パターンが強く、周囲との交流や、状況に応じた柔軟な対応を苦手とすることが多いため、周囲の配慮が重要です。
ただし、ASDの特性のあらわれ方は、かなりばらつきがあるため、画一的な配慮は適切ではありません。一人ひとりの特性に合わせた対応の工夫が大切です。
工夫の一例
自分自身の工夫
・手順に沿って、段階に分けてスモールステップで進める
・口頭による情報でなく、目で確認できる情報(メールやメモなど)をもらえるようにお願いしてみる
・音や光などが苦手な場合は、座る位置を調整する、ヘッドホンや光をさえぎるメガネなどを使う
周囲の人の工夫
・急な指示の変更を避ける
・あいまいな指示でなく、具体的で肯定的な指示を出す
・目で見る情報のほうが理解しやすい人には、視覚的に伝える
・手順に沿って、段階に分けてスモールステップで進める
・音や光などが苦手な場合は配慮する(大きな声でなく、ホワイトボードを使って伝える、座る位置を調整する)
仕事や生活の中でのちょっとしたコツやテクニックを知る
引用・参考文献
- ・厚生労働省:発達障害の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633453.pdf(2024年10月2日アクセス) - ・国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部 発達障害情報・支援センター:発達障害の理解のために
https://hattatsu.go.jp/notice/notice202108-01/(2024年10月2日アクセス) - ・厚生労働省:e-ヘルスネット ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html(2024年10月2日アクセス) - ・国立障害者リハビリテーションセンター(発達障害情報・支援センター)、国立特別支援教育総合研究所(発達障害教育推進センター)ほか:発達障害ナビポータル:自閉スペクトラム症
https://hattatsu.go.jp/supporter/healthcare_health/about-asd-2/(2024年10月2日アクセス) - ・国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所:こころの情報サイト 発達障害(神経発達症)
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MbkmLbVbTEhSpxyE(2024年10月2日アクセス) - ・ADHDの診断・治療指針に関する研究会 編: 注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第5版. 第1-4章. 株式会社じほう, 2022,
- ・政府広報 大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202302/1.html (2024年10月2日アクセス) - ・岩波明: 職場の発達障害. PHP研究所, 2023