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大学などが行う支援(障害学生支援室など)

監修:小坂 浩隆先生(福井大学医学部精神医学 教授)

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大学などが行う支援
(障害学生支援室など)

監修:小坂 浩隆先生(福井大学医学部精神医学 教授)

大学などが行う支援について
(障害学生支援室など)

神経発達症(発達障害)を持つ学生に対して支援を行っている大学や高等専門学校などは全国で500校以上あります(2022年5月現在)1)。

神経発達症(発達障害)の特性のために困りごとを抱えている学生は、どのように学内の支援を利用できるのでしょうか。

筑波大学では、アクセシビリティ支援チームで、障害のある学生やその家族、教職員などからの相談を受けています。神経発達症(発達障害)を持つ学生の面談やサポートにあたっている発達障害学生支援プロジェクト(RADDプロジェクト*)の取り組みを例としてお話を伺いました。

*Project on Reasonable Accommodation for Developmental Disabilities

筑波大学アクセシビリティ支援チーム/筑波大学発達障害学生支援プロジェクト
脇 貴典さん、中野 泰伺さん
(2023年7月取材)

  • Q1どんな学生が相談できる?

    どのような学生が相談・サポートを受けられるのでしょうか?


    A1

    筑波大学では、神経発達症(発達障害)について、特性の多様性をふまえて、診断の有無にかかわらず、困りごとを抱えている学生を対象にサポートを行っています。困りごとについては、アセスメント(学生からの聞き取りや検査結果などの総合的な評価・分析)を行い、個々の学生の困りごとに合ったサポートを検討しています。

    なお、筑波大学アクセシビリティ支援チームでは、学生がサポートを希望している場合には、支援申請書を提出してもらいます。

    ※サポートの対象となる学生は、学校によって異なります。

  • Q2どんな悩みが多い?

    神経発達症(発達障害)の学生の困りごとにはどのようなものがありますか?


    A2

    レポート課題や試験ができず単位取得が難しい、光や音などの多くの刺激がある場(大教室など)がつらい、といった学業面のことや、空きコマの過ごし方が分からない、時間や生活リズムのコントロールができない(スマホを見ていたら朝になっていた、ほか)、就職活動のグループディスカッションでうまく話せない、など一人ひとり様々です。

    なお、筑波大学の場合、 私たちの部門は、学業面での困りごとを中心に担当しており、生活や精神・心理面、就職・キャリア形成などの悩みがある場合は、学内の他の専門部門と連携して対応しています。

  • Q3どんなサポートを受けられる?

    筑波大学で受けられる学業面のサポートとは、どのようなものでしょうか?


    A3

    個別面談を行い、どのような困りごとがあるのか、どのような特性があるのかアセスメント(学生からの聞き取りや検査結果などの総合的な評価・分析)を行います。そして、どのような工夫やサポートがあると解決につながりそうか検討します。

    サポートの内容は様々です。例えば、学期末の一連の試験・レポート提出について実施計画を立てて、タスク・スケジュール管理をスタッフと一緒に進めていく面談(コーチング)は、行うことの多いサポートです。

    その他にも、録音機能付きデジタルペンや、付箋スケジュールボードといった支援機器を貸し出したり、大教室の授業の際にできるだけ苦痛が少なくなる席(本人が過ごしやすい座席位置)を一緒に考えたり、個々の学生に合わせて様々なサポートを行います。

    このような困りごとに対する自助スキルを向上するようなサポートだけでなく、合理的配慮*申請のサポートも受けられます。

    *大学などでの合理的配慮について…大学などにおいて教育を受ける場合に、障害により困難のある学生から、その困難を取り除くために何らかの対応を必要としている意思が伝えられた場合、大学などの学校は負担が重すぎない範囲で対応することが求められています。

    図 筑波大学で行う発達障害の診断または傾向のある学生へのサポート
    例(学業面)

    学生本人
    自助(セルフヘルプ)スキルの向上
    1. アセスメント(総合的な評価・分析)による発達障害特性の把握
    2. 支援技術・ツールの体験・貸出
    3. 学生同士のグループ活動
    4. 学びのスキルのコーチング
      ・試験・レポート提出の実施計画
      ・タスク・スケジュール管理
      ・レポート・論文作成の支援 など
    5. キャリア支援・カウンセリングの紹介
    教育環境(教職員など)
    教育環境の変更・調整
    (合理的配慮)
    1. 教員の指示伝達方法の変更・調整
    2. 提供する資料内容の変更・調整
    3. 受講方法の変更・調整
    4. 支援機器の利用許可
    5. 休憩室の確保
    6. 成績評価方法の変更・調整など
      ※成績評価基準は変更できない
    筑波大学発達障害学生支援プロジェクト 提供資料を基に作成
  • Q4期末試験・レポートでのサポートとは?

    学期末の試験・レポート実施計画のタスク・スケジュール管理とは、どのようなサポートでしょうか?


    A4

    神経発達症(発達障害)の特性のために、 短期に1つのことであればできることが多いですが、中長期的に複数のことを同時並行で進めるのが難しい場合があります。

    学期末は、「●月●日に試験」「●月●日●時までにレポート課題提出」など、多くの科目の準備をまとめて進めなければなりませんが、締め切りを忘れてしまったり、時間を正確に見積もることが困難なために時間が足りなくなってしまったりするケースがあります。

    そこで、スタッフと一緒にいったん全ての科目の課題を洗い出し、整理して、複数のタスク(やること)をスケジュールに落とし込みます。

    例えば、レポート提出日の翌日にテストがある場合、いつ対策ができるか? と考えたり、「この科目もテストがあった」といった見落としを防いだりすることができるなど、改めて学期末のタスクを整理できます。

  • Q5サポートを受けることでどんなよいことがある?

    神経発達症(発達障害)を持つ学生へのサポートを利用することで、どのようなよい面があるでしょうか?


    A5

    苦手なこと、できないことが多いために、そのリカバリーに多くの時間やコストを費やしている学生が多くいます。自分にとって苦手なことでも、どんな工夫やサポートがあればもう少しうまくいくのか? その他のアプローチの仕方はないのか? をスタッフと一緒に考えてチャレンジし、対処できたという経験を重ねていくことが大切ではないかと考えます。このようなサポートを通じて、本来自分が望んでいるような学生生活に近づくことができると思います。

    また、卒業後は、完全に一人きりで仕事をする場面は少ないと思います。誰かと一緒に物事を進める練習・経験にもなっていると思います。

  • Q6相談していることを他の人に知られたくないけれど…

    他の学生や教職員などに知られずに相談したりサポートを受けたりすることはできますか?


    A6

    自身の特性を周囲にオープンに伝えている学生もいる一方で、「誰にも知られたくない」という学生は実際多くいます。

    筑波大学では、個別面談や支援機器の貸し出しなどの一部のサポートは、他の学生や教職員に知られることなく利用できます。ただし、合理的配慮*の申請や授業の支援などは担当教員への開示が必要であり、他の専門部署と連携が必要な支援などもあります。

    そのため、どこまでの範囲の人に共有してよいかを確認し、希望を尊重しながら対応するようにしています。なお、教職員には守秘義務がありますので、本人の許可なく、情報が誰かに伝わることはありません。

    *大学などでの合理的配慮について…大学などにおいて教育を受ける場合に、障害により困難のある学生から、その困難を取り除くために何らかの対応を必要としている意思が伝えられた場合、大学などの学校は負担が重すぎない範囲で対応することが求められています。

  • Q7どんなサポートがあるのかを知るには?

    実際に自分がどのようなサポートを受けられるのか知りたいです。


    A7

    私たちの支援窓口には、すでにサポートを利用したことのある友人から紹介されて来たり、私たちのSNSを見て来たりするほか、別の部署からの紹介などもあります。自分が所属する大学や専門学校などにどのような相談部門やサポートがあるのか、各大学などの障害学生支援に関するWebページなどを確認しながら、自分なりの様々なチャネルで情報をキャッチすることが大切だと思います。

  • Q8学生支援部門のサポートを利用するのに抵抗感があるが…

    神経発達症(発達障害)に対する学内サポートを受けることに抵抗感があります。


    A8

    支援を受けることに抵抗感がある学生も少なからずいます。そこには「神経発達症(発達障害)」に対する社会や周囲のイメージも影響しているかもしれません。

    筑波大学の場合は、「自分をより多角的に知り、自分に合った方法を考える場所」と捉えると利用しやすいようです。スタッフとの何気ない面談の中でも「自分を客観視できる」と言う学生もいます。

    ただし、「相談したら即座に答えをくれる場所」「言ったらなんでもやってもらえる場所」ではありません。何をどこまでこれから自分でやっていく必要があるのかを一緒に考える場と捉えるとよいと思います。

    また、私たちは、グループ活動として学生生活の困りごとを学生が話し合う場を設けており、発言せずに聴くだけの参加も可能としています。同じ学生の立場だからこそ共感したり、受け入れやすかったりするなど、サポートを受けることに対するハードルが下がるようです。

    自身の通う大学などでそうした機会があれば、利用しやすい活動を見つけて、利用してみるのもよいと思います。

  • Q9困りごとを抱えている学生へのメッセージ

    神経発達症(発達障害)のために困りごとを抱えている学生にメッセージをお願いします。


    A9

    青年期は、障害の有無にかかわらず、あやふやな自己に悩むことが多い時期です。そうした時期に、障害の特性のためにさらなる困りごとを抱えるのは、とても大変で、苦しいことだと思います。

    一人で考えて見えるものもありますが、誰かと一緒に悩んで考えることで新たに見えてくるものもあるかもしれません。

    学内の障害学生支援部門は、障害学生の声を聞きながら一緒に考える機会を持つことができるところですので、何かあればいつでも相談に来ていただきたいと思います。

  • 引用・参考文献
  •  1)令和4年度(2022年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書
    https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_shogai_syugaku/__icsFiles/afieldfile/2023/09/13/2022_houkoku3.pdf(2023年10月25日アクセス)
監修:
小坂 浩隆 先生
福井大学医学部精神医学 教授
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