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- エピソード―わたしと神経発達症
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周囲の理解について
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困っていること
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大人の神経発達症(発達障害)とは
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- 自分の特性を知る―医療機関に相談する
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大人の神経発達症(発達障害)の身近な相談窓口
相談窓口に聞いてきました
監修:小坂 浩隆先生(福井大学医学部精神医学 教授)
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、神経発達症(発達障害)の方への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関で、都道府県や政令指定都市に1ヵ所以上設置されています。
神経発達症(発達障害)の方やそのご家族がどのように利用できるところなのか、ある自治体の発達障害者支援センターにお聞きしました。
対象とする年齢や、支援の体制、提供する支援内容は、自治体によって異なります。お住まいの地域にあるセンターの支援内容をご確認ください。
なお、「〇〇(地域名)発達障害者支援センター」以外の名称で運営している自治体もあります。
(2023年7月取材)
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Q1誰がセンターを利用できる?
発達障害者支援センターは、どのような方が利用できますか。
A1
当センターでは、市内在住で、神経発達症(発達障害)のある方、また疑いのある方と、そのご家族や関係機関の方が利用できます。
自治体によって利用できる方は異なりますので、お住まいの地域にある発達障害者支援センターにご確認ください。
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Q2どんな方の相談が多い?
どのような方の相談が多いですか。
A2
成人の方は、以前は全体の3分の1程度でしたが、現在は約3分の2を占めるまで増えています。成人になってから相談される方も、子どもの頃からの利用を継続される方も多くなっています。
神経発達症(発達障害)の疑い(まだ診断を受けていない)段階で相談に来られる方の割合は、開設当初は8割でした。現在は、神経発達症(発達障害)のある方々を診ることができる医療機関が増加したことにより、以前より減って6割になっています。
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Q3どんな経緯で相談する?
どのような経緯で相談される方が多いのですか。
A3
当センターには、市内の公的機関のほか、例えば学生では、学校の学生相談室や学習塾など、民間を含む様々な機関を介した紹介があります。
一方、自らインターネットで調べて相談を申し込む方の割合が近年増えており、現在は半数程度です。スマートフォンの普及が影響しているように思います。
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Q4相談が多い困りごとは?
成人の方では、どのような困りごとの相談がありますか。
A4
「仕事で、注意されてもミスが続き、転職を繰り返している」「管理職になったが、管理ができず、エンジニアとしての仕事もうまくできなくなった」「ママ友との人間関係や家事がうまくできない」「子どもが発達障害と診断され、夫も発達障害ではないかと思う」など、様々な相談があります。
また、障害を開示して障害者雇用枠で働いている方もいれば、障害者手帳は取得しているが障害のことは開示せずに一般枠で働いている方など、背景も多様です。
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Q5支援はどんな流れ?
相談を申し込んでから、どのような流れで支援を受けるのでしょうか。
A5
当センターの場合、基本的には、①電話で相談を受ける→②初回面談→③継続面談の流れです。
まずは電話で相談申し込みを受けます。電話でのお話や情報提供で終わる時もありますが、多くの方が、初回面談に進みます。
初回面談は約60分で、問題の整理を行います。事前に問診票を渡して、「心配していること」「当センターに期待する相談や支援」などを記入いただいているので、整理が進めやすくなっています。
そして、必要に応じて、近隣で使える制度や施設の情報を提供したり、外部の機関につなげたりします。例えば、診断が受けられる医療機関や、仕事のことでは障害者職業センターや就労支援施設、子育てのことでは子育て支援センターなどです。また、当センターでは心理相談や医療相談、グループ活動などを行っているので、それらを活用することもあります。
その後も、必要に応じて面談を継続しながら支援していきます。
※ 自治体によって、センターの支援の流れは異なります。上記は一例であり、お住まいの地域にあるセンターの支援の流れをご確認ください。
支援の流れ(ある自治体の発達障害者支援センターの例)
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Q6どんな面談をする?
面談はどのようなものでしょうか。
A6
自治体によって面談の流れは異なりますが、当センターでは、いわゆるカウンセリングではなく、ケースワーカーによる面談を主に行います。「ここに来れば、その場で絶対的な解決策をもらえる」という気持ちで来られるかもしれませんが、単なるハウツーは必ずしも役に立つわけではありません。
面談の主な意義は、「自己理解を進めること」と「情報の提供」だと思います。お互いの問題解決力を上げていく「作戦会議」というイメージでしょうか。
例えば、仕事について会話する中で、「このことで自分はずっと困ってきたけれど、仕事で活かせる特性でもある」など、それまでよく見えていなかった自己像を捉えられるようになることがあります。自分にとって「できそう」なことを積み上げたり、あるいは「必ずしも〇〇でなくてもよい」ことを見直したりする作業をしています。面談は、その方その方に必要な作戦を一緒に考える場所で、面談から帰った後の毎日の時間を豊かにするための場所だと思っています。
また、心理面でのケアも大切ですが、使える制度や機関などの情報が、真の意味で役に立つこともあると考えています。
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Q7仕事以外のことへの対応は?
仕事以外のことへの対応もありますか。
A7
当センターでは、片付けや食事のことなど生活面の困りごとも、その方に合いそうな作戦を一緒に考えています。タスク管理のシステムを使うことが合う方もいますし、例えば数や色をそろえたいなど、その方が持っているこだわりを活かすとうまくいくこともあります。
また、本人や家族のグループ活動も定期的に行っています。例えば、成人期になって診断された方のご家族に、体験の共有や心理教育を通して受け止めていく支援をする家族グループなどもあります。
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Q8支援の課題は?
支援の上での課題はありますか。
A8
相談に来られる方が非常に多くなっているため、待機期間ができてしまっています。問題が進行・変遷する前に、できるだけスピーディーに対応したいのですが、申し込みから初回面談まで1ヵ月半ほど待機いただいています(2023年8月現在)。これは全国的な課題であると思います。
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Q9神経発達症(発達障害)で悩みを抱えている方へのメッセージ
神経発達症(発達障害)の特性のために悩みを抱えている方へ、メッセージをお願いします。
A9
見た目からは分かりにくい障害のため、苦労されてきたと思います。「誰かに話しても理解してもらえない」とあきらめ、多くの時間と労力を費やして一人でがんばってきたかもしれません。できること・できないことの差が大きく、自分が乖離するような気持ちを抱えて、アイデンティティーを築くことが難しかった方もいらっしゃると思います。
ただ、今までと状況を変えるには、誰かと話すことがやはり大切です。自分の直感を大切にして「この人なら大丈夫かな」と思う周囲の人に話してみてほしいと心から思います。事態は動くかもしれません。地域の発達障害者支援センターは、理解してもらえないことは少ない場所だと思います。